転売屋のモラルや迷惑行為への心理的規制と法整備 YOSHIKIらアーティストの声はどこまで響くのか

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ここ数年、チケット高額転売に反対する声や報道が活発になっています。

2016年8月には音楽業界4団体が120組以上のアーティストから賛同を得て声明を発表し、この4月、X JAPANのYOSHIKIが賛同することも発表されました。

発売と同時に転売目的で多くのチケットが買い占められ、横流しによって利益を得る。これが正当な経済活動なのか、ビジネスと呼べるものなのか。いろいろな見かたがあると思いますが、個人的には強い違和感をおぼえます。

本当にそれを求めている人が手にできないことはもちろん、行き過ぎた転売屋の行為がマーケットを複雑化させ、不公正なものにしているように感じるのです。

いまだ完全な解決策は見つけられていませんが、どのような整備がされていくのでしょう。

YOSHIKIらアーティストが訴える「転売NO」

YOSHIKIさんのPR事務局によれば、今夏開催のX JAPANのツアー日本公演やYOSHIKIさんのディナーショーのチケットが、先行販売が始まったばかりのタイミングで、相次いで転売サイトで出回っているという。「(X JAPANのライブツアーやYOSHIKIさんのディナーショーなどの)チケットが10~20倍もの高値で売買されているのは、極めて悪質な行為とも捉えられる(同事務局)。

 YOSHIKIさんは、こうした状況を問題視。「自分にとってライブは、ファンとのコミュニケーションが取れる、とても貴重で大切な場所。一部の心無い人達の行為によって、純粋に音楽を楽しもうとしている最愛のファンが傷付くのは、許されることではない」と声明を発表している。
出展:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1704/25/news131.html

YOSHIKIのディナーショーが行われるのは、東京・グランド・ハイアット東京、大阪・RITZ CARLTON大阪、愛知・名古屋マリオットといった、いずれも「一流」といわれるホテル。3会場とも正規のチケット価格は、86,400円(税込)です。

定価の時点で十分に高額チケットですが、それが10~20倍で売買されているとなると、もはやプラチナチケットを超え、どんな希少性のある言葉をつければよいのかわかりません。

需要があるからこそ供給されるのであって、その値段でも欲しい人がいるから売買は成立します。もちろん2次転売、3次転売を念頭に置く売買も含まれますが、いずれにせよ出演者であるYOSHIKIや主催者側が、うかがい知ることのない場所で行われていることが問題です。

自分の魂をかけたパフォーマンスが、本当に求めているファンへ届く前に、無断で仲介する者が暴利を貪ることで妨害される。「許されることではない」と強い表現をしつつも、YOSHIKIの心情は悲しみでいっぱいでしょう。

損をしているのはファン、そして出演者

ドームやアリーナクラスのライブ会場に訪れたことのある人なら、固まったブロックが不自然に空席になっているのを目にした経験があるはずです。決まって数カ所程度はそんな無人地帯が発生するようで、ネットでも多くの報告がされています。

正規の購入者が来られない場合もあるのでそれらの全てとはいえませんが、多くの場合、その原因となるのはやはり転売の存在です。転売屋がさばき切れなかった複数のチケットが、異様な無人地帯を生み出すのです。

高額が理由により購入できなかったファン、アーティストたちの「転売NO」という声明を知って、正規販売を遵守し転売からの購入を拒んだファン。いずれにせよ、買いたくても買えないファンは不幸です。そしてこれらの歪は、ファン離れを進める原因にもなっていきます。

また、不自然な空席の目立つ会場は、少なからず出演者のモチベーションにも影響するのではないでしょうか。大きな会場の出演者のマインドがどういったものなのかは実際にはわかりませんが、やはり不幸なことには違いありません。実際の集客力や今後の会場選定もわからなくなってしまいます。

当然ですが、転売をする者を介しない状況なら、これら影響は極めて小さいものに抑えることができます。

転売は違法か資本主義の原則か

以前、元大阪市長で弁護士の橋下徹さんが、「転売は資本主義の大原則であり、批判すること自体がおかしい」と発言し、物議を醸しました。

安く買い高く売る。価値のあるものだからこそ高値で売買される。自由な経済活動、資本主義の正常な姿とも言えるのかもしれません。

しかしながらその一方で、古くからダフ行為の禁止はされてきましたし、チケット転売での逮捕者も記憶に新しいところです。

チケットにとどまらず、数年前には転売目的に買い占められた「妖怪ウォッチ」のおもちゃが、何倍もの高値で流通することもありました。親の経済力や意向によって、欲しくても手にできない子どもたちが、大勢いたのです。なんら罪のない幼児たちが「割を食う」かっこうです。

転売そのものを咎めることはできませんが、場合によっては違法性が生まれ、またモラルや人道的に批判される行為になり得るものに感じます。

スキームそのものの見直しの必要性

情に訴えるだけではない、どのような施策が考えられるのでしょうか。法規制や厳罰化だけを追うのではなく、販売方法や付随する仕組みそのものを見直すべき時にきているようにも感じます。

対策を模索するアーティストたち

マキシマムザホルモン メンバー

実際のライブの出演者側であるアーティストたちも、自らさまざまな働きかけをしています。

フェスなどでも圧倒的なパフォーマンスを見せるロックバンド・マキシマムザホルモンは、先の共同声明に名を連ねる他、独自の転売防止策で賞賛の声を集めました。

「『ホルモンの事がどれだけ好きか原稿用紙に熱いメッセージを書いて提出しなくてはチケットが買えない』という狂気の制度を作った事がある。つまりダフ屋もホルモンの事を勉強してファンの振りをする努力が必要になったのである!」
出展:http://www.oricon.co.jp/news/2077289/full/

破天荒でありながらもファンを大切にするイメージと相まって、一度切りの施策にも関わらず1万件以上のリツイート、いいね!により拡散されました。

また、同じくライブパフォーマンスや楽曲センスでコアな人気を博すバンド・サカナクションの山口一郎さんは、「チケット高額転売とネットダフ屋行為」の抑止に向けた現状報告会などにも積極的に参加し、強い憤りを口にしながらも事態改善への行動をし続けています。

適正価格の在り方

大量に買い占めて販売するという転売ビジネスが成立するためには、①その商品が売切れ、なおかつ②それ以上の需要があることが最低条件として必要です。

人気アーティストのライブチケットは、そもそも適正価格で販売されていない点も問題の一つではないでしょうか。無名のインディーズバンドが対バン5組くらいで行うキャパ100名にも満たない小さな箱(ライブハウス)でのライブでも、1ドリンク別で2,000〜3,000円で販売されます。その半面、数万人規模を動員する「一流」とされるアーティストのライブでも、1万円前後という価格設定です。

また、フィギュアスケートのアイスショー(体育館クラス)のアリーナ席で2万円〜3万円ですし、ミュージカルやサーカスショーでも数万円のチケットは珍しいことではありません。

これらはあくまで一つの比較であって優劣の話ではありませんが、やはり1万円という価格は適正とはいい難いように感じます。ネットで更なる高額取引に発展している現状が、その証拠、根拠との見かたもできるでしょう。

アーティストのイメージに影響を与えかねないため、あまり高額な設定をすることはできませんし、何より「一般のファン」が手を出せない価格も適正とはいえません。「富裕層の集い」のような場になることも懸念することでしょう。

しかしながら、なんら権利もモラルも持ち合わせていない者がその利ざやを稼ぎ、本当の意味でそれを求める者や主催者が泣かなくてはいけない事態は、早く解消しなくてはなりません。

本人確認制度と転売抑止力

このような転売ビジネスの蔓延を背景に、ライブ会場では本人確認書類やファンクラブ会員証の提示を求めることも一般的になりつつあります。提示なき場合、本人確認ができない場合は入場不可の旨を事前に周知し、チケット確認や持ち物検査などと同時に行うというものです。

アナウンスだけして実際には行わないケースや、確認作業が「ざる」である場合もあるようですが、実際に入場拒否とされた人の声もネットには多数あります。その中で一番不幸なのは、【正規購入ができず泣く泣く転売チケットを購入し入場できなかった本当のファン】です。入場目前で拒まれる悔しさは、想像に難くありません。

この本人確認制度についてはさまざまな情報が飛び交っており、いわゆる裏ワザや必勝法のようなノウハウも出てきています。転売の抑止力としての疑問も高まってきているようです。

2次流通と返品制度

ファンは正規購入をするためファンクラブに何口も入会し、友人や家族の協力を得て、保険として複数のチケット購入にエントリーするものです。そして偶然にも希望する以上の枚数の権利を得た場合でも、喜んでばかりはいられません。キャンセルすることはできないため、すべて購入する義務が発生するのですから。

そして購入した「不要なチケット」はオークションや転売サイトに出品され取引されます。それが高値になった場合、「稼ぎ」になることを理解した場合、その本当のファンが転売屋に成り変わらない保障はないでしょう。これはとても悲しいことです。

正規で2次流通させるための仕組みづくりも進められていますし、期日やガイドラインを定めた返品制度の採用なども検討していくべきなのかもしれません。

いつまで「紙」のチケットを使用するのか

いまいち活発にならない動きに、チケットレス化があります。「Tチケット」や「スマチケ」などがあります(ありました)が、やはり運用上の難しさが大きいのでしょうか。これだけスマホやQRコードが普及している現在、どうにでもなりそうな印象があるのは、素人だからなのかもしれません。

とはいうものの、個人的にもう何年も飛行機の登場チケットを発券していないことや、実店舗でのあらゆる買い物を電子マネーで済ませていることを考えると、十分実現できるように感じます。(これこそが素人考えかも)

もちろんチケットレスにすることが直接的な転売防止に繋がるわけではありませんが、それを組み込んだコスト調整などは、オンラインでの返品制度や2次流通の仕組みの拡充に一役買う気がするのです。

過度な転売はインターネットの功罪か

大量に買い占めて売りさばくこと、安く買い高く売るができることは、インターネットがあってこそです。道具は使う人間によってプラスにもマイナスにもなりますが、この転売問題はマイナスの部分が色濃く出ていると感じずにはいられません。

現代人のモラルは崩壊しているという声も多いですし、そう思いたくない気持ちと、理想論や性善説だけではダメだという気持ちとを交錯させている人も多いのかもしれません。

自由民主党の石破茂議員の弁によると、なるべく早く、新しい法律が必要だそうですね。インターネット関連の法整備はどうしても後手後手に回るものですが、その動向にも注目です。

法規制や販売の流れ、運営の仕組みを整えることはもちろん大切なことですが、それ以上に僕たち一人ひとりが「ネットの向こう側にいる人」を意識することの共有が急務な気がします。

文章を書くこと、コンテンツを作ることはもちろん、物を買うことや売ることも必ずその相手は「人」なわけです。

ネットの向こう側に人の笑顔や涙を想像することができれば、自分の行動の先にいる人の表情を想像することができれば。

想像力の乏しいビジネスの行く末は一つです。

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ABOUT運営者情報

北海道出身、東京都在住。幼少期から音楽に触れ、ビジュアル系バンドでの活動を経て作曲家へ。その後、大手IT金融グループ社員を経て独立。現在はアフィリエイトやネットマーケティングのコンサルティングを通じて、研鑽の日々を送っています。